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由布は買い物に行く。
(はぁ…はぁ…気持ち悪い。でも、恵介さんがいるの…。)
いつも通り、少ない買い物をする。
「う!?」
由布はしゃがみ込む。お腹を押さえる。
店の人は気付き、
「お腹にいるのね。子供は悪くない。けれどね、幸せにはなれない。あきらめなさい。」
「嫌です…産みたいです…恵介さんとの宝物…うぅ…。」
由布はお腹を愛おしく撫でる。
「いるの…?愛しいわ…。」
母親の顔。何も言えない店の人。けなげに恵介を愛している由布。
「はぁ…はぁ…恵介さん…愛しています…。」
由布は疲れて倒れる。やはり、食べていない事が、由布の体力を奪っていた。
由布は気付く。
「あ、赤ちゃん…。」
「食べていなかったら、育つものも育たないわ。はい、食べなさい。」
店の人。
一途な由布は、
「恵介さんが帰ってくる…料理を作らないと…。」
「その体で?」
「頑張って働いていますから。笑顔見たら。…信じています。私が信じなければ、妻ではありません。弱気を見せては、悲しい顔をするの。そんなのできません…。」
「わかったわ。少しだけ多く売るわ。赤ちゃんがいる身、二人を亡くしてはいけない。ただし、食べなさい。」
「ありがとうございます。ありがとうございます。」
由布は帰る。すると恵介は帰って来ていて、帰っていない由布を捜していた。
「由布、よかった…。最近顔色悪かったし、食べていない。もしかしたらと…。」
「ありがとうございます。あのね…、お腹に赤ちゃんがいるみたいなの。だから、お買い物していたら疲れてちゃって。」
「赤ちゃん!?本当に!!」
恵介は由布を抱く。
「あぁ、何て幸せなのだろう。由布、休んでいるんだ。」
「ダメ、恵介さんの料理作らないと。」
「料理できるよ。」
「大丈夫です。」
「手伝うよ。」
恵介は笑顔。
「今度、休みに一緒に出掛けよう。」
「はい。」
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