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通って欲しい時には車ってのは通らないものなのか
こんな夜更けに車が通ること自体あたしにとっては考えられないことではあるけど
時刻はそろそろ日付が変わろうとしていて
最悪な1日が終わろうとしている
本当に散々な目に遭ったけど、思いがけずお客様と親しくなれたことが嬉しくてそのことを考えるだけで笑みがこぼれた
『タメ口以上に言葉遣い悪く話した方が喜ぶなんて、変わった人たちだよな、ホントに…』
目前が車のライトで明るくなって、地面に目を凝らした
キラッと一瞬光って車が通り過ぎるのと同時にまた見えなくなってしまった
腰を曲げてキツい体制で携帯電話の光を翳す
『この辺だと思ったんだけど…。キーホルダー付けとけば良かった…』
下をずっと向いていると頭がクラクラしてくる
明日、明るくなってから来た方がいいかな…
『あっこれガラスだ』
ちょうど、目標にしていた物体はガラスの欠片だった
『ヨッットッ』
曲げていた腰を伸ばして、路地全体を見るように携帯電話の光で照らした
タイミングよく車が通って周りが明るくなる
『あっあった』
今いる道の反対側の公園の植え込みにキラッと光って見えた
『振り回したから飛んだんだ』
すぐ隣りの筋の街灯の灯りで車のライトが無くても僅かに見ることが出来た
『この自転車邪魔』
放置自転車の間を塗って植え込みに手を伸ばす
『ヨッ…ハッ…』
手を伸ばしてプルプル震える体を抑えながら、ようやく取ることが出来た
『やった…』
僅かな光に翳すと、紛れも無くロッカーの鍵だった
向こう側で誰か何か言ってる様だけど聞こえない
目の前はもやがかかったように霞む
『そろそろヤバいかな…』
僅かに残った体力も使い果たしていて、バッグを肘に掛けた重たい方へと体が傾いていくのを感じながら、もうどうすることも出来なかった
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