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なかなか切り出さない二人に苛立つ
さっさと言えばいいのに
『で?話があるんじゃないの?』
自分でも驚く程に低い声に二人が揃って肩を揺らした
『ああ、まあ…彼女、同じ店で働いてる水『いや名前なんて聞いて無いから』
しどろもどろに紹介し始める彼を遮った
『単刀直入に言って』
『ああ、んと。別れてくれないかな?』
どうして疑問符を付けるんだろう
彼が好きなのは今や自分で無いことは嫌でも分かるのに
久しぶりに見たはにかむ笑顔が他の人に当たり前の様に向けられている様を見ると苦しい
『それってあたしの意思で今さらどうにかなる訳?』
『いや…それは…』
『あたしの意見なんて意味無いでしょ?違う?別れ無いって言ってどうにかなるもんなの?もう少し考えてから話しなさいよ』
空気の読めないマスターは無表情に“いらっしゃいませ”なんて言って水を置いて行った
ついでに空になったあたしのコップにも水を並々と注いでくれたから一口飲んでカラカラの喉を潤した
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