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そう声をかけてきたのは、20ぐらいの男性である。彼は、彼女に向かってではなく、彼女の隣にいる彼女の父親を、意識しながら、祝いの言葉を淡々と語る。
これで今日15人目である。誰1人として彼女に向かって、彼女の目を見て、彼女だけを見て!祝いの言葉を言ってくれた者はいない。
今日は、彼女のバースデーパーティーであり、彼女の父親に媚びを売るパーティーではないのに…。
「お父様私失礼いたしますわ。」
そういうと彼女は、自室に戻ると
「何が、お嬢様お美しくなりましたね。よ!あなた方は、私を見てなどいないじゃない!父に媚びを売ることばかり考えて!だから男性なんて嫌いよ!」
彼女は、そう叫ぶと本棚から、1冊の本を取り出す。
苛々した時に、いつも読むその本を抱きしめながら、彼女にしては珍しく、
「アレフ様…」と男性の名を呟くのであった。
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