1.プロローグは甘い罠

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 世の中には、どの時代に於いても身分差がある。  百合子(ゆりこ)は母親の早桜(さくら)がメイドをしている屋敷を訪れる度に間近で格差を感じていた。  世界に名を馳せる三大財閥とは福河(ふくかわ)、天王(てんのう)、そして西園寺(さいおんじ)を指す。  早桜はその一つ、西園寺のメイドで最も位が高く、西園寺の現トップからも絶大な信頼を得ていた。  だからこそ百合子はいつも西園寺の跡取り息子の良く言えば遊び相手、悪く言えば玩具にされる。  とは言うものの、長男は早々と自立し海外へ、次男は彼女と半駆け落ちして半破門、三男は何の躊躇いも無く一般の女性の家に婿養子に―――余るは3人と歳が20以上掛け離れた一番質(たち)の悪い小学6年生の四男だけである。  何気にその四男の日向(ひなた)が跡取りの最有力候補であり、百合子はそんな奴のお気に入りだったりもした。  金の力には逆らえず、早桜の為にも抗えず―――気が付けば赤ん坊だった日向も、小学校低学年だった百合子も大分成長を遂げた。  日向は俺様に  百合子はツンデレに  共に過ごしていた日々が時の流れと共に、二人に変化を齎した。
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