28.甘く蕩ける珈琲の如く

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 百合子はひっつき虫より強力な力で日向に縋る。  どちらが悲しんでいるのか分からないほど百合子はわんわんと涙を流し続けていた。 「……しばらく百合子と二人にしてくれないか?」 「かしこまりました。何かあれば直ぐにお呼び下さい」  部屋に控えていた全ての使用人はお辞儀をして部屋を去る。  静かな中で響いたのは百合子の泣き声だけだった。 「百合子、力を緩めろ。顔が見えねーだろ……?」 「ひ……なた……」 「キスしたいから離せ……。百合子に命令する……」  ピクッ、と反応した百合子はキス出来る程度離れる。  満足げに笑った日向は百合子をベッドに倒した。  日向は百合子の髪を丁寧に払いのける。覆いかぶさるように体重を百合子に掛けた。  舌を忍ばせて深く濃く絡み合わせる。  静寂に響くのは二人が発する卑猥な水音だけだった。
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