28.甘く蕩ける珈琲の如く

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「きゅ……急に笑えなんて無理だよ……っ」  じーっと顔を見つめられる百合子はじわりじわりと頬を濃い赤にして行く。  日向はにんまりしながら百合子を眺めていた。  口元が憎いくらいに艶めいている。 「無理? 無理、ねぇ……」 「……今日は……」 「仕方ねぇなぁ……」  日向が易々と引くとは考えられない。  しかし、今日は珍しいことに大人しかった。 「……百合子を頼まれたから虐めんのは止めとこう」  日向は百合子の頭をポンポンと撫でて一人頷く。  何を言っているのかが百合子には分からなかった。  しかし、頭を撫でられたのは少し照れ臭く、心地好い。 「今日、久しぶりに母さんの夢を見たんだ」 「蛍さんの……?」 「うん。それで、何か、百合子を頼まれた」  百合子はますますクエスチョンを頭上に浮かべる。  蛍との面識は殆ど無かった。  日向の母親である蛍が百合子を頼む意味が分からなかった。 「百合子。さっき俺様が言ったこと、ちゃんと覚えとけよ?」 「う、うん……」 「そんなら俺様はもう少し寝るから、はい、横に来る」  日向はあくまでもマイペースに会話を切って百合子を抱きまくら代わりに眠った。
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