29.二人はさくらんぼ

2/10

9317人が本棚に入れています
本棚に追加
/407ページ
「……今日は百合子と二人で出掛ける。絶対、尾行は許さない」  クリスマスに日向は使用人全員にそれを告げた。  特に視線を向けて強調されたのは―――智之である。  西園寺の子息がボディーガード無しで外出など以っての外だ。  日向は自分の置かれた立場を省みようとはしない。  当然、先日の出来事を根に持つ智之と一悶着起こる。 「なりません。行きたい所があるなら私がお連れ致します」 「クリスマスに今井と行きたい場所なんか無い」 「当然、百合子さんもお連れ致します。二人とも、私から離れての行動は許しません」  智之は随分と過保護且つ厳しく豹変した。  日向とセットの百合子も随分と自由に制限が加わる。  自分の身を考えてのことだと考えれば仕方のないことであろう。  しかし、日向に“理屈”が通用しないのはいつものことだ。
/407ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9317人が本棚に入れています
本棚に追加