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日向の言い方はいつになく可愛さが欠けていた。
百合子はそんな日向の異変に気付き、彼に近付く。
「どうしたの?」
「……嫌なことを思い付いた―――けど、信じたくない……ッ」
日向は賢い。
少しの疑問と知りたい好奇心と知りたくない思いが時に見たくない物を見せる。
百合子を縁とする日向にとって肯定したくない真実に限りなく近い仮説が迫った。
仮説は真実で、真実は仮説を経て真実となるのだから真実であり……―――永遠にループする。
日向はその輪の抜け道を必死に探しているのだ。
「大丈夫……。大丈夫だから」
日向は百合子の心音を聞くと安心して身を委ねる。
パニックが少しずつ去り、日向を子供に戻した。
百合子は一定のリズムで腕の中の小さな日向の肩を叩きながら繰り返し何度も「大丈夫だよ」と伝えてあげる。
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