第二話

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少ししてから、私たちは家の裏口に立っていた。 すぐに少年はそこから少し離れたところで草鞋(わらじ)を脱ぎ始めた。 ――それは決まりごとの一つ。 私は止めるよう促したけど、少年は決まりだ、と聞かなかった。 がら… 私は念のため父が居るかどうか確かめた。 丁度良く、まだ夕飯の買出しか何かから帰っていないらしい。 人気がなかった。 「さぁ、入って。 その格好のままじゃ通りで目立っちゃうから、着替えも持ってくるね。 …あ、そこで顔も洗っておいて」 「おい」 少年は文句ありげな声で私を引き止める。 「私は”おい”じゃないっ。 志那って名前が在るの。 ――ぁ…そういえば、貴方は何ていうの?」 「――師走」 師走は真冬の月だ。 私は人の名前を覚えることは不得手な方だったが、彼の髪の色を見ると、すんなり、頭に入ってしまう。 ――雪を思わせる、白銀の髪。 それは顔を隠すほどの長髪だった。 何だか引き込まれてしまいそう。 どぎまぎしてしまう。 「――じゃ、じゃあ、持って来るね、師走」 「待――」 私は少年――師走に引き止められたが、それを聞かずに奥の部屋へ向かった。
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