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私はずっと悩んでいた。
確かに蒼理さんのことは好きだと思っていたが、それは「恋愛」と言うより「敬愛」や「憧れ」の気持ちが強く、夫婦になれ、と言われても、やはりどこかが「違う」のだ。
けど、蒼理さんは私のことが好きだと言ってくれた。
――私にはそんな気持ちはほとんど無い。
でも傷つけたくなんて無い。
そう思っていた。
しかしそれは今思うととても卑怯で、相手に失礼な気持ち。
そのときはそんなことを思ってもみなかった――後ろめたさが全く無かったわけではないのだけれど。
「そんなこと言わないで受け取ってよ。
これはおれの気持ちなんだから。
志那も言っているじゃない…人の好意は受け取れって」
「――そう…ですよね…申し訳ありませんでした」
私はカンザシを帯の背中側に挿した。
「謝らなくてもいいよ…おれも考えなしだったみたいだし。
――でも、それが志那に一番似合うと思ったんだ。
李加もそう言ってくれたし」
「李加?」
私は思いがけない名前に、少し驚く。
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