第二話

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――裏口。 「ご免、随分待たせたよね?」 「――いや…相手が許婚なら仕方ないだろ」 「何で……っ」 私は顔を赤くする。 「家の廊下、一直線だろ…話も全部筒抜けだったぞ。 ったく、玄関先で何やって――」 「貴方には関係ないでしょ。 余計なこと言わないで」 ――何をいらついていたのだろう。 普段なら、こんなことを言ったりしないのに。 私はすぐに我に返り、「ごめん」と小さく呟いた。 師走もふ、と目をそらし、「――別にいいけど」とそっけなく言った。 そして付け足し言う。 「もう少しあいつに優しくするべきなんじゃないのか?」 その声は、何処かため息混じり。 「――……」 私は当然の指摘に対し、言葉を失くしてしまう。 そして更に指摘が続く。 「俺なんかに構っている暇があったらあいつの家にでも行けばいいだろう」 ――そう、それは事実。 そうするべきに違いない。 けど。
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