第二話

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「――私…私は…ね、蒼理さんのことをそういう目で見たことは一度もないの。 互いの親同士が決めたことで、私にはそんな気持ちはないの」 「――ふぅん…… あいつ、見たところ、良家の跡取りだろう?」 「そう、蒼理さんはすぐ近くの大きな酒屋に長男よ。 本来私には勿体無いくらいいい話なのも分かってる。 でも、家のためと思っても、どうしても気が進まない。 ――出来れば、自分の好きになった人と一緒になりたかったな」 淋しさと切なさに、笑うしかなかった。 突然ふ、と私の頬に、師走の手が触れる。 その手は何処か冷たく、それでいて何処か暖かかった。 「――泣くな。 俺は泣いてる奴が嫌いだ。 泣く前に自分に出来ることをするべきだろ」 私はいつの間に涙を流していたのだろう。 けど、少し楽になった。 「ありがとう」 ぐすぐすいいながらの言葉。 「何で礼を言うんだ?」 そっけなく、それでいて何処か優しい少年は、眉をひそめながら言った。 「いいじゃない。 私、この件に関して、誰かに本当の気持ちを言ったのは初めてなんだから」 私が言うと、師走が少し目を見開いたように見えた。 それは、一瞬のこと。
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