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「――どうかした?」
「別に……」
その声は、やはりそっけないものだった。
――気のせいかな…?
「…まぁいいや。
そう言えば、風邪をこじらせている人は何を食べているの?」
「普段と同じものだ。
滋養のあるものがないからな」
「――お粥とかどう?」
「粥……?」
「そうよ!
風邪の時にいいって聞くもの。
――私、明日村に届けるわ!!」
今、私に出来そうなこと。
「――同情、か?
可哀相とでも思ったのか?」
師走の癇に障ったらしい。
もし私が男だったら、掴みかかっていたに違いない。
整った顔が、怒りに歪んでいた。
「私は身分制度が嫌い。
――それじゃ理由にならないかな?
生まれで身分が決められて、仕事も服装も全部御上の言いなり。
何でそこまで枠にはめられなきゃいけないのって疑問に思ってた!
だから、もうそんな制度を守りたくないの……」
「――なら…それが本音だとどう証明する気だ?」
師走はぽつりとつぶやいた。
私の言葉をどう受け止めたのだろう。
「明日お粥を村に持って行くわ。
罰せられることが少しでも怖い人間にそんなことが出来る?
――私は怖くない」
私の心は決まっていた。何としても行ってみせる。
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