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師走は、小さくため息をついた。
何処かばつが悪そう。
「――もし来るなら、途中でぼろきれにでも着替えろ。
…それくらいはした方がいい」
私はその言葉を嬉しく思った。
「わかった!
――さて、そろそろ父さんが帰ってくる時間ね。
捕まりたくないなら、帰った方がいいわ」
言い方が悪かったかもしれないが、事実だ。
「そうだな。
――色々と済まなかった」
師走はぎこちなく微笑んだ。
その表情はやっぱり、優しい。
「私が勝手にしたことだから、礼なんかいいわよ」
「――確かにそうだな」
師走は荷物を持ち、裏口の戸を開けた。
そして、振り返り、悪戯っぽく笑う。
「じゃぁな! 八方美人!!」
「酷い!
こうなったら絶対行ってやる!!」
私が言い切る前に戸は閉まった。
――師走…不思議な人。
ぶっきらぼうで、何処か冷たいようにも見えるけど……優しい人。
「さぁて!
お粥、作るぞ――ッ!!」
私はいそいそと慣れない料理の準備を始めた。
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