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「――もう追ってこないわよね…」
体力自慢の私が全力疾走したのだから、中年の父が追ってこられるはずも無かったが。
”体力自慢”…
……本来女である私が言うのもなんだが、祝言が決まるまでは店の経営の勉強と店先で働きながら用心棒のようなこともしていた。
幼い頃から父に武術の基礎を教わっていた為、嫌でも体力がついたのだ。
――いつの間にか父を凌ぐほどに。
「――いい天気。
今日は何かいいことがありそう」
実はこの日、私は十七になったのだ。
そんな日に少し暑いけれど、雲ひとつ無い青空。
私は嬉しくてたまらなかった。
――今日も一日平和でありますように…なんてね
そう心で呟いたその瞬間だった。
「泥棒だ――!!
誰かあいつを捕まえてくれェッ!!!!」
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