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ぶつかってきた少年がいきなり怒鳴り始める。
「…ってぇ…。
気ィ付けろ!! 愚図女!!!!」
「――なっっ…前見てなかったのはそっちでしょ!?」
私が言ったことを聞かずに彼は起き上がり、地面に落ちたものを急いでかき集めた。
何を拾っているのだろう、と、私はその手にふっと目をやった。
布。
――この少年が犯人だ。
「――あなた…」
私が言い終わらないうちに、星霜屋から走ってきたと思われる親父が怒鳴る。
「――葵屋の娘だな! そいつを捕まえてくれ!!」
「!!」
親父の怒鳴り声を聞いた少年は手を止めた。
「来い!!!!」
少年は布を投げ捨てたかと思うと私の手をとり、走り出す。
「何するのよ!?」
星霜屋の親父が息せき近づいたかと思ったが、どんどん離れて行く。
少年と、彼に引かれて走る私の方が数段速かったのだ。
「待てェ――ッッ!!!!」
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