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「――もう…放してくれない?」
私が息を切らしながら言うと、少年は私の手を放した。
が、それと同時に懐から小刀を出し、私の首に突きつける。
「俺の顔をこんな近くで見ておいて、助かる、何て思っていないよな…?」
長い前髪の影から、鋭い眼光。
――本気だ。
「――確かに。
普通ならただでは済まされないでしょうね」
いざとなれば蹴ってでも逃げてやる。
「ああ、今更他人を殺すなんてわけないさ」
彼は笑いながら言った。
しかしその笑みは自嘲しているようにも見えた。
その態度が何故か引っ掛かる。
「――何故そんなことを言うの…?」
「俺達は生まれた時から穢れているんだ」
「穢…れ……?」
「――お前、俺が何者か気付かないのか?」
彼は何処か呆れたように言った。
――「穢れ」……
それに異臭、服装……まさか…………
「……あなた……もしかして……」
「ああ…お前の予想通りだ。
とにかく、お前には死んでもらう」
彼は小刀を更に近づける。
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