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彼は本来この町に立ち入ってはいけない身分の者だったらしい。
とんでもない相手と関わってしまった……
――でも。
「待って!」
「何だ」
「貴方は…何の為に布を盗もうとしたの?」
私はどうしても知りたかった。
何か理由があったに違いない。
彼は鋭い眼光の中に憂いも抱いていた。
とても悪い人には見えない。
「お前には関係ないだろう」
少年はいらつき始めていた。
「――いいから言いなさい!!」
今思うと、私は自分の立場が分かっていなかった。
殺される一歩前だというのに、この口調。
しかし彼は一瞬ひるんだことは確かだ。
小刀を持つ左手がびくりとしたことが何よりの証拠。
――この調子ね…
彼らが信心深いことは知っていた。
私はそこを攻めることにしたのだ。
「――言わないと…
死んだら寝床に出てやるわ……」
「馬鹿馬鹿しい」
一言吐き捨てた少年に構わず、私は小刀を持つ手を握る。
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