第一話

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彼は本来この町に立ち入ってはいけない身分の者だったらしい。 とんでもない相手と関わってしまった…… ――でも。 「待って!」 「何だ」 「貴方は…何の為に布を盗もうとしたの?」 私はどうしても知りたかった。 何か理由があったに違いない。 彼は鋭い眼光の中に憂いも抱いていた。 とても悪い人には見えない。 「お前には関係ないだろう」 少年はいらつき始めていた。 「――いいから言いなさい!!」 今思うと、私は自分の立場が分かっていなかった。 殺される一歩前だというのに、この口調。 しかし彼は一瞬ひるんだことは確かだ。 小刀を持つ左手がびくりとしたことが何よりの証拠。 ――この調子ね… 彼らが信心深いことは知っていた。 私はそこを攻めることにしたのだ。 「――言わないと… 死んだら寝床に出てやるわ……」 「馬鹿馬鹿しい」 一言吐き捨てた少年に構わず、私は小刀を持つ手を握る。
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