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―――AM5時。
ピリリリリリリ。
広い屋敷の中で朝を告げる目覚まし時計の音が鳴る。
「ん…もう少しだけ~」
目覚まし時計が鳴り響いてる部屋の主は呑気に二度寝をしていた。
ガチャ。
「お嬢様。もう朝ですのでお目覚め下さい」
部屋の扉が開かれたと同時に朝から聞きたくもない声が耳に聞こえてきた。
「まだ時間あるし!もう少しだけ寝たって…」
「なりません。紫条財閥のご令嬢であろう方が時間を守れないとなれば私の責任を問われます」
「あー煩い!分かったわよ、起きれば良いんでしょ。起きれば!」
「お嬢様。お言葉にはくれぐれもお気をつけ下さいと何度も申し上げて…」
「はい、はい!」
「お返事は一回ですよ」
「分・か・り・ま・し・た・わ」
「では。私は車の用意をしてきますのでその間にご支度をお済ませ下さい」
「………」
「お返事は、お嬢様?」
「分かりました!」
「では、失礼致します」
軽く一礼をすると踵を返して部屋を出て行く。
(朝から一々煩いのよ、もう)
あの朝から口煩いのは私の世話係兼執事の神崎湊斗。
見た目は肩ぐらいまである青い髪に映える琥珀色の瞳。端から見れば美青年とも言えるその顔立ちはとても優雅だ。その彼の笑顔ときたらとても素敵だが口煩いのが玉にキズだ。
その口煩い執事が仕える主である紫条財閥の娘である紫条刹那。
湊斗とは小さい頃からの付き合いでお互いにお互いをよく知り尽くしている。
(あれで私より一個上とか有り得ないし)
文句を言いつつも支度を済ませ、湊斗が待っているであろうロビーへと下りる。
「車のご用意が出来ました」
「ご苦労様。朝ご飯は時間がないから抜きで良いや」
「なりません。朝食を抜いては力も出ませんし頭も働きません。どうかお取り下さい」
「分かったわよ!ぢゃあ、おにぎりにして頂戴」
「かしこまりました」
主の命令を聞いたや否、湊斗はテキパキとおにぎりを作り綺麗におにぎりを包装した袋を手渡してくれた。
「どうぞ。お嬢様」
「有難う。では学校に参りましょう」
「承知致しました」
湊斗に車へと誘導され家から三時間もかかる学校へと向かう。
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