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隣で微笑ましくしている彼女は岐城財閥のご令嬢・岐城柊(キジョウヒイラギ)。私と同じ聖アルシフォン学園に通うお嬢様で私の親友。
見た目は朱色の髪で短いショートヘアが幼い顔に似合っている。深緑がかかった碧の瞳が気丈らしい顔立ちを際立せる。
「柊はさ…家を継ぐの?」
「あら。どうしてかしら?」
「えっと。…嫌にならない?」
「それはあるけれど家を継ぐことが私の責務だもの。受け入れるのが当たり前よ」
「そっかぁ。柊は偉いね」
「そんなことありませんわ。それよりも刹那は家を継がない気でいるのかしら?」
「うん、まぁね!」
「何がそんなに嫌なのかしら?」
「ただ…親が引いたレールの上を生きてくのが嫌なだけ。だって私個人の意志なんて必要ないみたいじゃない?」
「そうね。でも…私達にはそれに抗えるほどの権力がないわ」
「そう、だけど…でも私は嫌だからさ。せいぜい抗ってやるわ」
「…刹那が羨ましいわ」
「えっ?何か言った、柊?」
「いえ。何でも有りませんわ」
「そう?…なら良いけど」
「それよりも早く行きましょう!遅刻したら長いご指導がありますわよ!」
「げっ!?それだけは断固阻止」
「クスッ。では参りましょうか」
「あ、うん」
二人は急いで(優雅に)学園の門まで走る。しかし刹那の頭の中では柊が一瞬見せた、曇った顔だけがとにかく気掛かりだった。
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