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「はい!そこまで」
あと数㎝の所でキスをする所だった刹那と遠夜の間に和むような声が挟む。
「あん?せっかく良い所だったのに…止めんぢゃあねぇーよ、郁」
「良い所ねぇ~。でも彼女が嫌がってるように見えたんだけど」
「あー気のせいだ(棒読み)」
「何処からどう見ても遠夜が無理矢理、彼女に迫ってるように見えたんだけど」
「うるせぇ。俺の女なんだから俺が何しても良いんだよ」
「誰が君のものだって?僕の婚約者でもある彼女を譲った覚えも渡した覚えもないんだけど」
「俺様に指図するな!」
「別に。ただ遠夜が何しようと勝手だけど…僕の所有物に手を出したら、いくら親友である遠夜でも許さないから」
「わぁーたよ」
「分かったなら早く彼女から離れてくれる?」
「それは嫌だ」
「クスッ。は・な・れ・ろ?」
「仕方ねぇーな」
渋々と刹那から身を退いた遠夜はかなりご機嫌ななめにして教室へと帰って行った。
「大丈夫だった?刹那」
「えっ?あ、うん」
郁、と呼ばれた青年もまた刹那の第二候補の婚約者であり、仙堂財閥のご子息・仙堂郁である。見た目は長い紫紺の髪が綺麗に後ろで一つに結われている。また赤色の瞳が妖艶さを醸し出している。端から見れば美青年とも言えるだろう。
性格はとても優しいが怒ると誰にも手がつけられないほど暴言を吐く。いわゆる二重人格ね。腹黒さは人よりズバ抜けていて何を企んでいるのか分からない笑顔がまた怖いのよね。
「良かった!遠夜なんかに君の大切な唇を渡したくはないしね」
「た、助けてくれて有難う///」
「婚約者として当たり前のことをしたまでだよ」
「だから!私は…」
「クスッ。僕を婚約者として認めてない?それなら仕方ないね…でも僕は君の婚約者だから君のすべてが欲しくなるね」
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