雪の日に逃げました。

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「ったく、京と江戸ってえのは、こうも違うもんなのかねえ。女を傷つけて喜ぶなんざ、どうかしてるぜ。」 先程の二人の男である。 どうやら先程の列には並ばなかったようだ。 「そうでもないんじゃないですか?怪しい裏稼業なら江戸にもありますし。あの娘さん、もう慣れてるのか大人しかったですね。」 左手に団子を持ったもう一人の男が言う。 「ったってよ。大金払ってまでやりたいか?そんなもん、わざわざ金出さなくたってその辺のごろつき共をぶっ飛ばしゃあいいじゃねえか。」 そう言って拳を前に突きだし、殴る振りをする。 「あははっ。そうは言っても私達がそのごろつきみたいなもんじゃないですか。」 「どうにかしねえとな。こっちに残ったはいいが、身の置き所がねえ。」 「そこがあなたの頑張りどこじゃないですか。」 「団子食ってねぇで、お前もちっとは考えろよ。」 もぐもぐ… もぐもぐ… もぐもぐ… 「おいっ」 もぐもぐ… 「やだなぁ。聞いてますよ。私がそんな事考えられる筈が無いでしょう。まったく。だから貴方に頼んでるんじゃないですか。」 団子を食べていて返事が遅くなった男に、もう一人の何やら熱い気性の男は頭が痛くなる思いであった。 「それより、また降り始めたし、何より寒いし、早く帰りましょう。ねっ。」 そう言って頭を押さえる男を追い抜き歩き始めた。 男達と女の出会い。 運命が交わるのは、もう少し先の話し――。
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