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「適当に座って…コーヒー入れる……あー、言っておくけど、砂糖とかミルクなんて贅沢品はねぇぞ。コーヒーはブラックに限る!」
と一方的にまくし立てた。
隼人は布団をどかしたスペースに座り部屋中を見回した。
―ここが弦の根城かぁ―
そしてあるものを見つけて驚いたが、話をはぐらかして
「お、おい…お前、あんまり友達いないだろ?」
弦はコーヒーを入れながら
「えっ?何で?」
と答えた。
隼人は壁を指差して、
「これ、俺の映画のポスターじゃん。野郎が野郎のポスター部屋ん中貼ってるヤツなんか友達居ねぇよ」
そう言って笑った。
弦は、
「何言ってんだよ。お前はまさに俺等のヒーローなんだから、当たり前じゃねえかよ。それにこの映画好きなんだよ俺。はい、コーヒー」
そう答えて、隼人にコーヒーを差し出した。
隼人は照れくさそうにして一口コーヒーを飲んで、話を変えた。
「ところで台本読んだ?」
「読んだも読まねえも無いだろ…俺の配役聞いてないんだから…」
「まあ、まあ今に分かるさ」
「今にってどういう事だよ?」
弦は半ば怒りながら聞いた。
「そういやぁ、今日ここに来た目的言ってなかったな…実はこれから今回の芝居の顔合わせがあるから一緒に行こうと思って、寄って見たんだよ」
弦は驚いて、
「これからって…オイちょっと待て!俺バイト入ってんだよ」
「バイトなんかどうでもいいじゃん」
「良かねぇよ!こっちは生活かかってんだから…」
「…じゃなにかお前!?今回の芝居はバイトに負けるのか!?あの“蒲田行進曲”はコンビニの“おでん”に劣るのか!?」
そんな聞き覚えのあるセリフを、隼人が芝居口調でニヤけながら言って、
「お前の1ヶ月の生活費ぐらい俺が出すよ。心配すんな!だからこれから一緒にいくぞ!」
と続けた。
弦はすかさず
「それと、チケット手売りって事はないよね!?」
「…んな訳ないじゃん」
弦は納得した表情で
「よし!それなら安心して芝居に専念出来るぞ!」
と指を組んで大きく伸びをして首を左右に倒してポキポキと鳴らした。
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