~ 第2幕 顔合わせ ~

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 隼人の車は、劇場の地下にある駐車場へと入って行った。  空いているスペースに車を入れ、アクセルをひと吹かししてエンジンを止めた。 「よし!着いた」  隼人はシートベルトを外し、ドアを開け、体を左に捻ろうとして助手席の弦の不自然さに気が付いた。  弦は真正面を向いたまま一点を見つめ、車を降りようとはしなかった。  隼人は 「どうした?車酔いか?」  そう言って開けていた運転席のドアをまた閉めた。  弦はボソっと 「まるで…本ベルが鳴った緊張感だ…」 と、言った。  しんと静まり返った駐車場とエンジンの止まった車内は、弦の心臓の鼓動が聞こえてきそうで、それは弦の気持ちをますます昂らせていた。  隼人は敢えて、 「な~んだお前。もう緊張してんの?早すぎだよ~」  と、明るく言うと、 「お前は“場かず”踏んでるから判んないだろうな…」  と、弦は言った。  さらに続けて、 「俺は名もない“三文役者”だから…これから起こる全てが、何だか場違いの様な気がしてな…」  そんな弦の様子にそれまで緊張感などみじんもなかった隼人にも、妙な緊張がジワっと襲ってきた。 ―まずい…俺まで緊張してきた……いや、ダメだ…俺がここで緊張するわけにはいかない―  そう思って、無理に明るく、 「だから、楽しむんだって!芝居を!楽しくやれたらそれでいいじゃん!」  と、弦の肩の辺りを叩いた。  弦は暫く考え込む様子で、 「ああ…そうだよな…。楽しまなくっちゃな…所詮、下手くそなんだから…」  自分自身にそう言い聞かせたものの、簡単に気持ちを落ち着かせられる訳もなく、黙ったままシートベルトを外し、隼人より先に車を降りた。  そして、緊張を振り払うかの様に、思い切り車のドアを閉めた。  隼人も、苦笑いしながら車から降りた。
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