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弦がそんな態度を取るのも無理はなかった。
隼人と一緒に会議室に入った時も、席に着いた後も、
『東条と親しげに入ってきた奴は誰だ?』
そんな空気があったし、事実囁かれていた。
弦はそんな空気になるだろう事は充分覚悟していた。
さらに自分自身の緊張を悟られまいとわざとそんな横柄な態度をとった。
ある意味、駐車場の車の中で腹をくくった。“役づくり”をしていたのだ。
そんな空気の中、各スタッフのチーフが挨拶をしたが、弦は相変わらずの頬杖えの態度のままだった。
スタッフの挨拶が終わり、キャストへと順番が回ろうとした時、プロデューサーが割り込んで、
「えー今回、一部キャストの変更が有ります」
と、言った。
会議室の視線は一斉に弦に向けられた。
弦は“やっと来たか”と思いながらも、どこか救われた気がした。
―フーッ。やっと俺の正体を名乗れるよ。疲れるぜ―
そんな2つの思いだった。
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