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すると突然隼人が、
「すいません。それは僕から説明させて下さい」
と、立ち上がった。
会議室にいる全ての人間の視線が隼人に集まった。
「えーと…。今回の芝居で“倉岡銀四郎”役をやらせてもらいます。東条です。皆さんご存知の様に蒲田行進曲と言えば“銀ちゃん”と“ヤス”が一対な訳ですが、そのヤス役をやる予定だった大橋さんが体調不良で役を降りる事になりました。重要な“銀ちゃんの相方”ヤスですから、プロデューサーはじめつかだ先生から直々に、僕に相談がありました。そして、嬉しい事に僕の一存で決めてくれていいと言ってくれました。その時、僕の頭の中にはひとりの役者しか浮かびませんでした。それが今ここにいる彼です」
と、弦を紹介した。
衆目の目はすかさず、弦に向けられた。
隼人は続けて、
「おそらく、ここにいるほとんどの方は彼を知らないでしょう。でも僕は10年以上の付き合いです。彼ならこのピンチを救ってくれると確信を持っています。今後とも僕同様に宜しくお願いします」
隼人がそう言って頭を下げ、イスに座るのとは逆に弦が立ち上がった。
雰囲気はまだまだ『どんな奴なんだ』という懐疑心が漂っていた。
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