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久し振りの再会から半年が過ぎたある日、隼人は弦を呼び出した。
ホテルのラウンジで待ち合わせた2人は弦の方が先に着き、時間を持て余すようにラウンジのソファーに座りキョロキョロと辺りを見渡していた。
暫くして弦の前にキャップを深めに被ったサングラスの男が現れた。
隼人だった。
「スマン…突然呼び出して…」
「おぉ!隼人か…そうだよな。顔が差しちまうからな、素顔じゃコンビニにも行けないだろ」
「いやぁ、俺は構わないんだけど、事務所がうるさくてね」
そう言って、弦の前に腰を降ろした。
「早速だけどな、弦。お前この先1ヶ月のスケジュールどうなってる?」
弦は即座に、
「なぁ~んもないよ。真っ白」
と宙を見て笑って答えた。
「だったら都合がいい。実はな、俺と舞台やんないか?」
と隼人は切り出した。
「舞台って、だって今お前大河ドラマ出てんだろ。そんな時間あんのかよ」
と弦は質問を切り返した。
「大河って半年に1ヶ月位休みがあんだよ」
「へぇ~それで?」
「その1ヶ月の間に3日間公演の舞台やらせて下さいっていうオファーが前からあって、まあ休んでいるよりか気分転換出来っかなと思ってOKしたんだけど、相手役の方が体調崩しちまってさ…」
「…で自由時間の多い俺に出演交渉って訳だ」
「そーいうこと!何せ時間が無いんだ…スマン…」
そう言って隼人は両手を合わせて弦の顔の前で懇願した。
「……」
「……」
暫くの間があって
弦は真剣な眼差しを隼人に向け
「…本当に、俺でいいのか?」
と言った。
隼人は、キャップとサングラスを外しテーブルの上に置いて
「お前じゃなきゃダメなんだ」
と言い、真剣な眼差しを返した。
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