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「慶兄ぃ~夕理子さんと同じ事言わないでよ!」
と沙姫は言うと夕理子は含み笑いをしながら慶介に手を振った。
「夕理子!真似するな!」
「慶ちゃん酷い~」
と言っているが、お互い笑っている。それは冗談を言っていると分かっているからだ。
「彼とは初めてあったの。そう言えば名前聞いて無かったよね?私間宮沙姫」
「僕の名前は成瀬隼人です」
成瀬隼人は美加の考えた偽名で弘樹は『こっちの方が良い』と言う理由であっさり翔太の案を却下した。
「隼人くん紹介するね。兄の間宮慶介兄さん」
「初めて。間宮慶介です」
と自己紹介をして、握手をした。そして男性陣が席に立ったら沙姫は美加にストレートに聞いて来た。
「椿さん!慶兄ぃの事どう思いますか?」
美加は口に含んでいたジンジャエールを気管に詰まらせてむせた。暫く咳き込んで、改めて聞いた。
「どうしてそう思うの?」
「だって慶兄ぃ貴方の話をする度口許がゆる」
と言いかけたところで、慶介が沙姫の口を封じていた。沙姫は苦しいと訴えているが、慶介は聞こえない振りをした。美加はその光景を見て思い出していた。幸せだった毎日。兄が自分に意地悪をしたら両頬を引っ張って痛いと言っていたが顔は笑っていた。父も母も穏やかな笑顔を浮かべていた。
「椿さん?」
いつの間にか泣いていた。目を擦ろうとしたら慶介がハンカチを渡した。
「良かったら使って下さい」
たった一言だが美加の心は満たされた気持ちになった。
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