序章:生誕

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行き場の無い悲しみが、あたりを包み込みます。 ただただ、悲しみで涙が止まりませんでした。 皆が泣き崩れて、どれだけの時が流れたでしょう。 「……ライナ……お願いがあるの……。」  静寂を遮ったのは、泣き続け少し声の枯れた、キュリア様の声でした。  その声を聴いた瞬間、ライナを含め、その場にいた女中達全員が、肩をすくめます。  王の命令は、『男児が生まれた場合、その場で殺せ』と言うもの。つまり、今、この場で……。  ライナは、王の言葉を聞いたとき、覚悟をしていました。  もし、男の子が生まれ、そしてキュリア様が生まれた子を手にかけることに抵抗されても、自分が必ず赤子を殺そうと。  何よりも、誰よりも大切な、キュリア様を守るために。
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