序章:生誕

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 しかし、『日の国』の王は違います。  暴虐の限りを尽くし、恐怖で民衆を押さえ込む王は、人知れず多くの人々に恐れられ、そして同時に、憎まれております。  もし、後継者である男児が誕生すれば、王子を王とする大義名分を掲げ、家臣達が自分を王座から引きずり降ろそうとするのではないか……。そう王は考え、恐れておいでなのです。  故に、皆願わずにはいられません。  生まれてくる子が、どうか王女であるようにと……。 「あうっ……うぅっ……ああっ!!」 「!! キュリア様っ!? 産湯……産湯をこれにっ!!」  ライナの声をかわきりに、女中達が忙しなく動き出しました。  赤ちゃんの頭が少しずつ出てきていたのです。
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