学校

4/6
前へ
/97ページ
次へ
「あ~♪ それ、あずさもやってるよ~。」 柊が、ゆったりしたテンポで話しに入ってきた。 意外だ。 柊はゲームとかしないタイプだと思っていた。 「あずさがゲームするなんて珍しいわね?」 翔子も同じことを思っていたらしく、口を挟む。 「うん、マンホールは特別かな? 勧められて始めたんだけど、ハマっちゃった♪」 桐生が身を乗りだす。 「マジかぁ!あずさちゃんもやってるんだったら、俺もやってみよ~♪」 柊がにっこりと微笑む。 「うん、オススメ~♪ ねぇ? 一ノ瀬君はしてるの~?」 そして突然、僕に話しかけてきた。 ん? 僕に? 驚いて一瞬、振り向いたが、一度も会話をしたことがなかったため、返答に困り、素っ気ない返事をして再び外を眺めだす。 「…興味ない。」 そんな僕に翔子が、怒りだす。 「コラ、一ノ瀬! そーゆー態度は良くないって、昔から言ってるでしょ!」 柊は悲しそうに俯いた。 「あずさ嫌われてるのかなぁ?」 そんな雰囲気を和らげようと、大久保がなだめる。 「まぁまぁ。 真木さんも落ち着いて。 あずさちゃんも、そんなことないって! 一ノ瀬は誰にでもこんな感じだからさ。 あっ!ほらほら、先生来たみたいだし。」 ホームルームの時間になったらしく、先生が教室に入ってきた。 「ほらほらー、みんな席に着いてー!」 翔子だけは僕を睨んでいたが、みんなしぶしぶ席に戻る。 ナイスタイミング!先生。 ホームルームが始まり、難を逃れた僕は、ホッとして外の景色を再び眺めだす。 僕の席からは、正門が見える。 正門から出て、右手にタバコ屋があり電話ボックスがあるのだが。 目は悪くはないので、それくらいの距離はハッキリ見える。 その電話ボックスのとこで、目が止まった。 いや、目を疑った! 朝、バス停にいたと思われる白い犬が器用にドアを開けて、ボックスの中に入っていくではないか! そして、何やら番号を押しているように見える。 その時! ブブブブ…ブブブブ… 僕の携帯が鳴りだした。 マナーモードにしていたので、みんなには気づかれていない。 そして携帯の液晶を見ると、 『着信 公衆電話』 え? まさか、あの犬から? いやいや、そんなわけない。 まったく、今日は朝からどうかしてる。 一人で悩んでいると。 「…のせくん、一ノ瀬君!」 先生が呼ぶ声がする。 「は、はい!」 思わず振り向くと、みんなに注目されていた。 僕はいつの間にか、立ち上がっていたみたいだ。
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加