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「あ~♪
それ、あずさもやってるよ~。」
柊が、ゆったりしたテンポで話しに入ってきた。
意外だ。
柊はゲームとかしないタイプだと思っていた。
「あずさがゲームするなんて珍しいわね?」
翔子も同じことを思っていたらしく、口を挟む。
「うん、マンホールは特別かな?
勧められて始めたんだけど、ハマっちゃった♪」
桐生が身を乗りだす。
「マジかぁ!あずさちゃんもやってるんだったら、俺もやってみよ~♪」
柊がにっこりと微笑む。
「うん、オススメ~♪
ねぇ?
一ノ瀬君はしてるの~?」
そして突然、僕に話しかけてきた。
ん?
僕に?
驚いて一瞬、振り向いたが、一度も会話をしたことがなかったため、返答に困り、素っ気ない返事をして再び外を眺めだす。
「…興味ない。」
そんな僕に翔子が、怒りだす。
「コラ、一ノ瀬!
そーゆー態度は良くないって、昔から言ってるでしょ!」
柊は悲しそうに俯いた。
「あずさ嫌われてるのかなぁ?」
そんな雰囲気を和らげようと、大久保がなだめる。
「まぁまぁ。
真木さんも落ち着いて。
あずさちゃんも、そんなことないって!
一ノ瀬は誰にでもこんな感じだからさ。
あっ!ほらほら、先生来たみたいだし。」
ホームルームの時間になったらしく、先生が教室に入ってきた。
「ほらほらー、みんな席に着いてー!」
翔子だけは僕を睨んでいたが、みんなしぶしぶ席に戻る。
ナイスタイミング!先生。
ホームルームが始まり、難を逃れた僕は、ホッとして外の景色を再び眺めだす。
僕の席からは、正門が見える。
正門から出て、右手にタバコ屋があり電話ボックスがあるのだが。
目は悪くはないので、それくらいの距離はハッキリ見える。
その電話ボックスのとこで、目が止まった。
いや、目を疑った!
朝、バス停にいたと思われる白い犬が器用にドアを開けて、ボックスの中に入っていくではないか!
そして、何やら番号を押しているように見える。
その時!
ブブブブ…ブブブブ…
僕の携帯が鳴りだした。
マナーモードにしていたので、みんなには気づかれていない。
そして携帯の液晶を見ると、
『着信 公衆電話』
え?
まさか、あの犬から?
いやいや、そんなわけない。
まったく、今日は朝からどうかしてる。
一人で悩んでいると。
「…のせくん、一ノ瀬君!」
先生が呼ぶ声がする。
「は、はい!」
思わず振り向くと、みんなに注目されていた。
僕はいつの間にか、立ち上がっていたみたいだ。
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