学校

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「どうしました?何かあるのですか?」 いえ、なにも。 すいません。 と言って座ると先生は、首をかしげながらも再び話しを再開した。 くそっ!目立ってしまった。 そう思いながら、携帯を見る。 『着信 一件』 呼び出しは止まっていた。 電話ボックスも見たが、あの犬はもういなかった。 その後、終業式も無事に終わり、帰りのホームルームの時間になっていた。 宿題などのプリントが配られていき、僕は帰る準備をしていた。 「ゆき!」 プリントを配っていた翔子が、小声で話しかけてきた。 翔子はみんなといるときは、気を遣って僕のことを名前では呼ばないが、誰も聞いてないときは、名前で呼ぶ。 「あんたさぁ! 後であずさに謝っておきなさいよ! 傷ついてたわよ?」 僕は一瞬考えたが、これ以上翔子と話すのは、目立つと思い、曖昧に返事をして会話を終わらせた。 「わかった。機会があれば、謝っておくよ。」 僕の曖昧な返事に、翔子は納得のいかない顔をしていたが、プリントを配る途中だったので、そのまま立ち去った。 そして、帰りのホームルームも終わり、僕は教室を出た。 廊下でふと呼び止められる。 「いっちのせ♪ この後暇ぁ?」 岸川だ。 なんだろう? 一緒に帰ろうとか言うつもりなのか? まったく迷惑な話しだ。 買い物をして帰る以外は、暇だったが、もちろん断る。 「ごめん、今日は用事があるんだ。」 岸川は、話しを聞いていないのか、日本語がわからないのか、話しを続ける。 「駅前になぁ。 今、評判になってる占い師がいるんだってよ? マキちゃんとあずさちゃんも行くんだけど、一緒行こうぜ?」 ピンときた。 恐らく、翔子が僕に謝る機会とやらを作ってるんだ。 向こうでは、翔子が睨みをきかせている。 本当は、こんなモテモテ三人組と行動するのは、目立つのが目に見えているので嫌だったが、後が怖いので承諾することに。 「わかったよ。 ちょうど、僕の用事も駅前にあるしね。」 よっしゃぁ!と岸川がガッツポーズをとる。 それを見て、あずさが喜ぶ。 「一ノ瀬君来るんだぁ♪ さぁいこ?翔子!」 まぁ補足だが、翔子は僕以外の男に名前を呼ばせない。 だから、マキちゃんとか名字にちゃん付けで呼ばれることが多い。 理由を一度聞いたことがあるが、僕は昔から呼んでいるから違和感ないけど、気安く男から名前を呼ばれたくないからだそうだ。
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