16人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうしました?何かあるのですか?」
いえ、なにも。
すいません。
と言って座ると先生は、首をかしげながらも再び話しを再開した。
くそっ!目立ってしまった。
そう思いながら、携帯を見る。
『着信 一件』
呼び出しは止まっていた。
電話ボックスも見たが、あの犬はもういなかった。
その後、終業式も無事に終わり、帰りのホームルームの時間になっていた。
宿題などのプリントが配られていき、僕は帰る準備をしていた。
「ゆき!」
プリントを配っていた翔子が、小声で話しかけてきた。
翔子はみんなといるときは、気を遣って僕のことを名前では呼ばないが、誰も聞いてないときは、名前で呼ぶ。
「あんたさぁ!
後であずさに謝っておきなさいよ!
傷ついてたわよ?」
僕は一瞬考えたが、これ以上翔子と話すのは、目立つと思い、曖昧に返事をして会話を終わらせた。
「わかった。機会があれば、謝っておくよ。」
僕の曖昧な返事に、翔子は納得のいかない顔をしていたが、プリントを配る途中だったので、そのまま立ち去った。
そして、帰りのホームルームも終わり、僕は教室を出た。
廊下でふと呼び止められる。
「いっちのせ♪
この後暇ぁ?」
岸川だ。
なんだろう?
一緒に帰ろうとか言うつもりなのか?
まったく迷惑な話しだ。
買い物をして帰る以外は、暇だったが、もちろん断る。
「ごめん、今日は用事があるんだ。」
岸川は、話しを聞いていないのか、日本語がわからないのか、話しを続ける。
「駅前になぁ。
今、評判になってる占い師がいるんだってよ?
マキちゃんとあずさちゃんも行くんだけど、一緒行こうぜ?」
ピンときた。
恐らく、翔子が僕に謝る機会とやらを作ってるんだ。
向こうでは、翔子が睨みをきかせている。
本当は、こんなモテモテ三人組と行動するのは、目立つのが目に見えているので嫌だったが、後が怖いので承諾することに。
「わかったよ。
ちょうど、僕の用事も駅前にあるしね。」
よっしゃぁ!と岸川がガッツポーズをとる。
それを見て、あずさが喜ぶ。
「一ノ瀬君来るんだぁ♪
さぁいこ?翔子!」
まぁ補足だが、翔子は僕以外の男に名前を呼ばせない。
だから、マキちゃんとか名字にちゃん付けで呼ばれることが多い。
理由を一度聞いたことがあるが、僕は昔から呼んでいるから違和感ないけど、気安く男から名前を呼ばれたくないからだそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!