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岸川がみんなを見る。
「さて、みんなどうする?
そのまま帰るのか?
一ノ瀬は用事があるとか言ってたよな?」
忘れてた!
時計を見ると、午後3時半を過ぎたところだった。
「そうねぇ~。
あずさ、どうする?
この後、別にすることもないし、一ノ瀬の買い物でもついていく?」
なんだそれは?
本気で言ってるのか?
冗談なのか?
やめてくれ…
だいたい人の家の夕飯の材料買うの見て、楽しいわけがないだろう?と思っていたのだが。
「あ~♪
それいいかも!
なんか楽しそう♪」
……ありえない。
これは、陰謀だ。
翔子の一ノ瀬改造計画にはめられている感じがする。
「マジかぁ?
みんな行くなら、俺もついて行くよ♪」
岸川まで!
翔子がニコニコして、こっちを見ている。
どうやら、拒否権は無さそうだ。
結局、みんなで買い出しに行くことに。
……はぁ。
ため息しか出てこない。
この時は、すぐバラバラになるだろうと予想していた。
「あっ!
ゴメン!
ちょっと、電話してくるね。」
翔子が思いついたように、携帯をもったまま、少し離れて行った。
何の電話だ?
普段は気にしないのだが、陥れられている今は、全てが怪しく見えた。
翔子が楽しそうに電話しているのが見える。
彼氏か?
いや、そういう話は聞いたことがないな。
先にスーパー行っててもいいかな?
すぐそこだし。
などと考えていたら、意外に早く電話が終わって、翔子が戻ってきた。
なにやら、楽しそうだ。
「さっ、いこっか♪」
何を企んでるんだ?
考えすぎなのかな?
翔子が先頭で、スーパーに向かう。
スーパーまで10mといった所で、突然翔子が振り向く。
「一ノ瀬?
夕飯は何にするか、決まっているの?」
僕は首を横にふる。
翔子は僕に向かって手のひらを縦に合わせて、
ゆき、ゴメンね。
と小声で囁いた。
何がゴメンなんだ?
「一ノ瀬さぁ♪
カレー好きだったよね?
ねぇ~、みんなっ♪
みんなで材料出し合って、一ノ瀬の家でカレー作ろうよ♪
ちなみに、一ノ瀬のおば様には了解済みであります♪」
僕は呆気にとられた。
さっきの電話は、それか!
「あ~♪
それいい~♪
あずさもカレー好きだよ♪」
柊に続き、岸川までも。
「おっ♪
そのイベントいいな!
マキちゃんの手料理食べるチャンスだし♪」
何だ?
夏か?
暑さがみんなをおかしくしているのか?
翔子がニコニコして、こっちを見ているのを見て、拒否権はないなと悟った。
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