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この日は何故か、朝から何かがおかしかった。
僕はいつものように、余裕を持って学校へ行く準備をしていた。
学校という集団生活の中では、平凡というやつが一番目立たない。
登校に関しては、早く行っても、ギリギリに行っても、目立ってしまう。
遅刻?欠席?
冗談じゃない!
とにかく僕は、目立たないようにしていた。
みんなと同じバスに乗り、集団にまぎれて登校する。もちろん、友達はいないため、会話をすることもない。
「ゆきーっ?
もうご飯食べたのー?
そろそろ、学校に行く時間じゃない?」
親から名前を呼ばれるのは構わないが、僕は自分の名前が嫌いだ。
しかし、僕の母親はこの名前を気に入ってる。
失踪した父親が付けた名前で『輝』かしい『夢』を叶えて欲しいという意味をこめたらしいが、僕には当然、そんなものはない。
それどころか『夢』だけじゃなく、『希望』も無さそうだ。
「うん、そろそろ出るよ。」
僕はトーストを口の中につめこむと、返事をした。
「今日も早いの?夕飯何がいい?」
僕は部活をしていない。
と言うか、家に余裕が無いのを知ってる為に、朝から新聞配達のバイトをしている。
しかも、今日で一学期が終わり夏休みに入るので、明日から違うバイトもしようと考えていた。
「今日は終業式だから、早いよ。
そしたら、夕飯の材料買って帰るね。
行ってきまーす。」
母親が台所から顔を出す。
「あっ、ゆき。
卵が切れてたの。
お願いしていい?」
僕は、わかった。と言って家を出た。
余裕を持って出たので、10分前にはバス停に着いたのだが、すでにバス停には三人の人が列んでいた。
みんな早いなぁ、と思って見てみて驚く。
まず、僕の前の人。
40代くらいのサラリーマン。
立っているだけで暑いらしく、黒いハンカチを片手に汗を拭いている。
むむっ!?
この人、汗を拭いたハンカチのせいで、カツラがズレているではないか。
と言うか、ズレているわけではなく前後逆さまに付けている??
これは、教えた方が親切なのだろうか?
いや、もしかすると流行りなのかもしれないと思ってスルーした。
よく見ると、二番目の人も変わっている。
というより、人間離れしている。
帽子を被って、イヤホンをして音楽を聞いている青年なのだが、頭の形が明らかにおかしい。
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