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目元から上を隠せば普通の人なんだが、そこから上に20cmほど伸びて尖っている。
そこに帽子を乗せている状態だ。
あの頭の中はどうなっているのだろうか?
無性に気になったが、ここもスルー。
そして、先頭の人?
いや、人じゃない。
犬だ。
白い毛並みの雑種で、背中に黒い模様がある。
その辺にいそうなノラ犬なのだが、お行儀良く座ってバスを待っている。
いや、待っているのだろうか?
いやいや、そんな訳ない。
ただ座っているだけだろうが、何故か青年もサラリーマンも違和感がないようで、普通にならんでいる。
青年の飼い犬だろうか?
しかし、バスには乗れないはず。
色々考えていると、僕が乗ろうとしているバスが見えてきた。
そして、その横を全力疾走している同じ高校の生徒がいた。
「はぁはぁ、はぁはぁ……
おぃっす!一ノ瀬!」
肩で息をしているこの生徒。
彼は、岸川栄司(きしかわえいじ)。
僕に話しかけてくる、数少ない内の一人だ。
友達?
向こうはどう思っているかは知らないが、僕は友達と思っていない。
友達と言うのは、どこからどこまでを指すのだろう?
人によって、定義は色々あるだろうが、友達を作ろうとしない僕にとって友達とは、信用できる人の事だ。
トラウマのある僕は、心を開かない。
だから信用しないし、されない。
だから僕は、友達などいない。
話しがそれたが、元に戻そう。
彼は、同じクラスメートで、しかも人気者だ。
誰にでも、話しかけるしよく気がきく。
だから、こんな僕にでも話しかけてくれる。
それに、名前が嫌いなのも知っているので、名字でしか呼ばない。
「岸川君、おはよう!」
とりあえず、挨拶をする。
と同時にバスも着いたようだ。
「一ノ瀬、朝から暗いぞ!明るくいこーぜ。」
相変わらず、嫌みを感じさせない。
が、余計なお世話だ。
そして、無言でバスに乗ろうとする。
!?
前にならんでいたはずの三人がいない。
いや、二人と一匹か。
バスに乗ったのだろうか?
「何、立ち止まってんだ?早く乗ろうぜ!」
岸川が僕の背中を押して、一緒に乗りこむ。
「う、うん。」
そして、バスに乗って周りを見るが、先にならんでいた人の姿がない。
「岸川君、僕の前にならんでいた人見た?」
彼なら、見ていたかもと思い聞いてみる。
「んっ?誰かいたんか?
見てないけど。
おっ!あそこ空いてる♪ついてるなっ♪座ろうぜ!」
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