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で、次の日に学校に行こうと電車に乗るときに、ふとその掲示板を見たら、ふたつ目の音符が書いてあったんだよね。
ちょっと気になって、近くまで行って見てみることにした。
うわ、何これってぐらい埃まみれの掲示板で、チョークで書かれた音符だけが何だか鮮やかだった。
よく見るとそれは忘れ物を書き込む掲示板で、駅員さんは音楽の落し物を拾ったのか、とか考えて何かよく分からないけどニヤニヤしながらその場を去った。
洒落た落書きをするやつもいるんだね。
次の日も何だか気になって、電車には乗らないのに駅に来てしまった。
それで掲示板を見るとみっつ目の音符があったんだよね。
これはもう誰かがここを楽譜とみた落書きをしてるとしか思えなかった。
何だか俺は久々に楽しい気分になったんだ。
それもこの間の面接の不採用が決まるまでだったけど。
俺はそれからも毎日その掲示板を見に行った。
1ヶ月もたったころには楽譜も様になってきたね。
その音符をひとつづつ辿っていくと頭の中に何だかなつかしいメロディーが流れるようだった。
きっと何か知ってる曲の楽譜なんだろうな。
落ち込んだときや、悲しいときもその掲示板を見てるとまぎれるようで、よく見に行ったよ。
完成が楽しみだった。
でもひとつだけ、誰が書いてるんだろうってことがずっと不思議だったけど。
それである日、とうとう書いてるのを見かけたんだ。
それはもう楽譜が半分以上できあがってきてたころで、俺は知ってる曲ってのは分かるんだけど、何の曲かは分からなかったんだよね。
何だか思い出せそうで忘れてるようなもどかしい感じ。
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