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その日はとうとう内定の連絡がきて、朝早くから会社に行かないといけない日だった。
いつも通り掲示板を見てたら、下のベンチに登って音符を書いてる小学生ぐらいの男の子がいたんだよね。
俺は思わず呼びかけて近づいたら、その子はこっちを少し見て、急いで走って駅を出て行った。
俺も急いで追いかけたよ。
俺が外を見たらもうその子はどこにもいなかったけど。
でも、その子が着てたTシャツには見覚えがあった。
あの大きな音符がプリントされたTシャツは昔俺が持ってたのと同じだったんだ。
そこで思わず気づいて、急いで掲示板に戻った。
俺は音符を目で追いながら掲示板の前に立ちつくしてしまった。
この曲を思い出したのだ。
間違いない、これは俺が中学校のころ初めて作曲した曲だった。
懐かしいメロディーが頭に甦ってきて、思わず涙がこぼれてきた。
そりゃこれは他の人に見えるはずがない。
だってこれは俺の忘れ物だったんだから。
とうの昔に忘れてた夢を教えてくれたのだった。
俺は思わず涙をふくのも忘れ、その続きをチョークで書いた。
今まで忘れてた音楽と夢を書きなぐった。
何か今までどっかに忘れてた体の一部がもどってきたような、そんな気分。
次の日にはもうその掲示板はなくなっていた。
もしかしたら見えなくなったのかも知れない。
でも、もう見えなくても問題はない。
だって忘れ物は思い出したんだから。
まあ、長くなったけどそんな話だった。
嘘か本当かも分からないし、別にこの話を聞いたからって何か変わるわけじゃないよね。
別にその友達が作曲家になったわけでもないけど、でも音楽をまた始めた。
ようするに、君たちにも自分でも忘れてるような忘れ物があるんじゃないか。
そういう話。
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