両親の記憶

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両親が旅立ったその日の夜、僕と姉の運命は大きく変わった。 夜の9時半。僕がベッドに入って間もなく、家の電話が鳴った。 ベルの音に目をこすりながら起きて来ると、お風呂に入っていたのだろう姉がバスタオル姿で現れて電話を取った。 「はい、もしもし。守山です。」 両親に公演予定のイタリアにつくのは明日の朝のはずだから、こんな時間に電話が来るのはおかしい。 そんなことを思いながら、姉の横で僕は電話の様子を伺った。 2、3分、電話口で話すと、表情を曇らせた姉は電話を切らないまま、リビングに走ってテレビのスイッチを押した。 ブオンと鈍い音をたててついたテレビに映し出されていたのは、飛行機が墜落したというニュースだった。 その瞬間、姉が隣に座った僕の肩を痛いくらいにぎゅうとだいて泣き出した。 初めて見た姉の泣く姿に、言いようのない不安に駆られた僕も大声を上げてないた。 電話をかけてきたのは両親の籍を置く事務所の人で、それは両親の乗った飛行機事故を知らせるものだった。
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