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『ねぇ、俺のことすき?』
その言葉を問うのは、一体何度目だろうか。
『おん、すきやで』
雑誌に目をやりながら、返ってくる言葉はいつも同じ。
初めて付き合う同性の恋人にお互いどこか戸惑いがあったのだとその時は気付くはずもなく、いつも相手の気持ちを確認するように発していた言葉だッた。
『俺を見てよ』
せっかくふたりきりになれたのに、いつまでも雑誌に夢中の亮ちゃんにふて腐れた顔で近付くと、それに気付いた亮ちゃんは雑誌をテーブルに置いて俺の腰を引き寄せた。
『竜也は甘えんぼやな』
それは亮ちゃんのほうでしょ?
唇が重なって隙間から絡められる器用な舌に、夢中になって自分も舌を絡ませる。
年下のくせにいつも自分より余裕があるように見える亮ちゃん。でも決して余裕があった訳じゃなかった。
俺が思ってる以上に、色々とおもう事はあったに違いない。
『りょう、ちゃん...ッ/』
『二人の時は亮、やろ?』
ソファの上で抱きあいながら、亮ちゃんの愛撫に身体を委ねる。
会えば愛情を、言葉と身体で確かめ合ッた。その愛情が冷める事なんて、考えることすら不可能だッた。
人の心は永遠なんかじゃない。
いや、違う。
自分自身が知らない間に相手を苦しめた結果が、離れていく原因を作っただけ。どこかで消えない不安とか、愛情を求めれば求めるほど、その重圧が相手にのしかかる事に、その時の俺はまだ気付いていなかった。
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