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歯車が狂い始めたのは確か、亮ちゃんのドラマの仕事が始まった頃。
『そんなに気になる?』
『ごめん、今日もドラマの撮りあるねん...』
せっかくオフだから会いに来たのに、亮ちゃんは時計ばかり気にしてる。申し訳なさそうにそう言う亮ちゃんに、俺はそれでも詰め寄って寂しさを紛らわせるように唇を押し付けた。
『...っ...竜、也..ッ』
仕事なんて忘れてしまえばいいのに。
自分勝手な俺はそんな風にすら思ってしまう。恋人の仕事を素直に喜んで支えてやる事も出来ない。
『......仕事、行ってくるわ』
静かに離れた唇がそう告げると、俺は一人部屋へと取り残された。
ドアの閉まる音が余計、孤独な気持ちを掻き立てる。
亮ちゃんは、俺より仕事のほうが大事なんだ。
決して聞いてはならない二択。そんな事は自分が1番分かってる。俺だッてコンサートと亮ちゃんなら、コンサートを取ってしまうのは当然の事だから。
分かってる。でも.....
この寂しさはどうやっても埋まらない。
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