自らをそう呼ぶ男

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?「カナメ、残り何匹だ?」 毛先にいくにつれ、黒から白に変わっている髪。中性的な童顔。声変わりしてもあまり低くない声。線が細く、170cmまでギリギリいかない身長。右顔面を覆う眼帯。 とても強そうには見えないその少年は、大量の魔物に囲まれていた。 ?「数は五千です、ゼロ様」 上空から漆黒の翼を生やした、黒い瞳と長いポニーテールの黒髪の小柄な少女が少年・ゼロのそばに降りてきた。 ゼロ「五千か。カナメ、一気に片付けるぞ」 少女・カナメは無言で頷くと、包帯の巻かれたゼロの右手をそっと胸に乗せる。 乗せられた右手から急激に魔力を吸い上げられていく。 カナメ「んっ」 魔力を吸われていくためか、雪のように白い肌が僅かに朱に染まる。 ゼロは左手を前に突き出す。 ゼロ「"雷鳴神槌"」 辺りが僅かに暗くなる。 ゼロ「"ライトニング・ストライク"!!」 ドゴガーンッ!! 空から何本もの太い雷が同時に降り注ぎ、爆音と共に魔物を殲滅していった。 ゼロ「ちょい、やりすぎたかな?」 カナメ「やりすぎですよ」 たしなめるような口調で言いながら、周りを見渡す。 辺りにはいくつか小さなクレーターがあった。 ゼロ「さて、帰るか」 少し離れたところに停めてある、赤と黒のツートンカラーバイクに乗る。 ゼロ「カナメ、翼しまって早く乗れ」 漆黒の翼を出したまま突っ立ているカナメにヘルメットを渡す。 カナメ「いつも言っているじゃありませんか、バイクは苦手だって」 少し頬を膨らませながらも翼をしまい、バイクの後ろに座る。 ゼロ「しっかり掴まってろよ」 そう言って荒野をバイクで駆けていった。
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