自らをそう呼ぶ男

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ギリリリリリ 静かな和室に、けたたましい目覚まし時計の音が響き渡る。 ゼロ「ファイッ!」 ガチンッ 気合いと共に目覚まし時計にチョップをいれて止める。 時刻は午前七時、あと一時間半後には学院に着かなければならない。 ゼロが布団から出ると、襖が開きカナメが入ってきた。 カナメ「おはようございます、ゼロ様」 ゼロ「おあよ~」 欠伸混じりに返事を返す。 カナメ「制服です」 ゼロ「ん~」 カナメから手渡された、動きやすそうな黒の制服に袖を通す。 カナメ「っ!!」 胸の真ん中に円形の大きな傷跡が見える。 ゼロ「お前が気にする必要はない」 カナメ「ですがっ」 傷跡から目を逸らさないようにしているが、表情はかなり辛そうだ。 ゼロ「それより、下も着替えたいから部屋から出てくれないか?」 カナメ「―――――っ!!」 顔真っ赤にして、普段の彼女からは考えられないほど慌てて部屋から出ていった。 ゼロ「ふぅ」 襖を閉め、右腕の包帯を緩める。 ゼロ「やっぱまだダメか」 そこには、脈打つ真っ黒な右腕がある。 ゼロ「また今度、カナメに訊いてみるしかないか」 そう言うと制服をしっかりと着て、学院に行く準備をしていった。
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