自らをそう呼ぶ男

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ゼロ「なぁ、カナメ」 カナメ「何でしょうか?」 ゼロとカナメは、未だ賑やかな教室を見ながら喋る。 ゼロ「昨日って確か、入学式と始業式があったんだよな?」 カナメ「はい。ですから、今日から授業が始まるはずです」 教室が徐々に静かになっていく。 ゼロ「俺等微妙に得してない? 面倒くさい式とか受けずにすんだし」 カナメ「かもしれませんね」 そう言って無邪気に笑うゼロ。それを見て微笑むカナメ。 カナメ(やっぱりカワイイです~) ゼロ「ん? 今変なこと考えなかったか、口元緩んでるし」 慌てて口元を押さえ、無表情に戻る。 カナメ「いえ、何も」 ゼロ「そっか」 それだけ言うと、再び賑やかになってきた教室の方を見る。 ゼロ「よくある小説とかの展開だと、この教室に昔の知り合いとかがいるんだよな」 カナメ「ですが、あのお二人は王族で王位継承者ですから流石にいないのでは?」 ゼロ「確かに、いくら何でもそんな都合のいいことはないわな」 痛々しい程の自虐的な笑みを浮かべ、窓の外を見上げる。 カナメ「…………」 カナメは何も言わずそっと後ろから抱きしめる。 ゼロ「もしかしたら、まだ未練があるのかな……」 アイルに呼ばれるまで、そうやってずっと抱きしめていた。
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