自らをそう呼ぶ男

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教室が静かになり、アイルがいくつかの連絡事項を言っていく。 アイル「気付いている子もいるとは思いますが、今日は転入生がいます」 教室が再び賑やかになる。 女生徒「先生! 男子ですか?」 男子生徒「女子ですか?」 女生徒「カッコいい!?」 男子生徒「可愛いですか!?」 口々にそんなことが聞こえてくる。と言っても特体生クラスには十人くらいの生徒しかいない。 アイル「男の子一人、女の子一人ですよ」 その言葉を聞き、より賑やかに、いや、よりうるさくなっていく。 アイル「男の子も女の子も小さくてかわい…」 「誰が小さくてカワイイだゴルァッ!!」 バガンッ!! アイル「ひっ!!」 突然教室のドアが蹴り破られ、アイルの鼻先を通過し、そのまま窓ガラスを突き破って下に落ちていった。 顔を青ざめさせ、蹴り破られたドアの方を見る。 アイル「ゼ、ゼロ君……」 そこには、こめかみをピクピクと痙攣させ、全身から怒りのオーラを発するゼロが立っていた。 その姿に怒り狂ったドラゴンが重なって見える。 アイル「ちっ、違う!! 違うわ、ゼロ君!!」 仮にもギルドランクの高い彼女が、クルセイドの教師である彼女が、腰を抜かし震えている。 アイルは、たった一筋の光に縋りつくように目を潤ませ、カナメの方を見るが……。 カナメ「……合掌……」 目を閉じて合掌をしていた。 唯一の頼みの綱だと思っていたカナメに手を合わされ、泣きそうになっているアイル。 ゼロ「大丈夫、安心して下さい」 アイル「ふぇ?」 情けない声と共にゼロを見上げる。 ゼロ「目も当てられない、判別もつけられないくらいですませてあげますから」 ニッコリと、慈愛の神のような微笑みを浮かべているが、内容が内容なだけに余計に恐怖心を仰ぎ、結果。 アイル「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 学院中に、魂の悲鳴が響きわたった。
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