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アヴェルが退院の準備をしていると、誰かが訪ねてきた。
アヴェル「あなたは……」
そこにいたのはアヴェルが庇ったメイドで、片手に何かを待って立っていた。
メイド「アヴェル様、本当に出て行かれるのですか?」
その声は、問うというより確認をするような声音だった。
アヴェル「ああ、ここにはいられない。それに、もうアヴェルじゃないよ。ゼロ、ゼロ・ルクスだ」
メイド「そうですか……私は、私の本当の名はカナメ・クロフォードと言います」
なにを思ったのか自己紹介をし始めた。
カナメ「私は魔族です。ですが、知識ばかりであまり強くありません」
カナメの言葉をアヴェル、いやゼロは、ただ静かに聞く。
カナメ「私はあなたの力になりたいんです。どうか、おそばに置いて下さいませんか?」
声は僅かに震え、懇願に近かった。
ゼロ「よろしく」
それだけ言って手を前に出した。
カナメ「え? あ、はい! よろしくお願いします!」
差し出された手を握り、固く握手した。
カナメの目から一滴の涙が流れていた。
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