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「老いし母
ただ一色(ひといろ)の
野のすみれ」 夏香の父は夏香が二歳の夏、海で事故に巻き込まれ還らぬ人となった。父は外国航路の操舵手をしていて、母へのお土産に化粧品など買って来たらしく、夏香がずいぶん大きくなるまでその化粧品を大事に使っていた。夏香が始めて口紅なるものと白粉なるもので、所謂お化粧をして貰ったのは、七歳の七五三の着物を着せてもらった朝である。未亡人となった母はそれから夏香と三人の子供達を育てるため、その化粧箱を空ける事無く、浮いた話も、再婚もせずに父だけを想い女を捨て生きてきた.この句はそんな母の生きざまを読んだ物。野原の小路に咲く小さな(菫)近頃ずいぶん 歳とったな。
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