約束の向こうへ

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そんなわけで、俺にとって徹さんは実の祖父みたいなところがある。別に実祖父だって至って健在だが、三人目のお爺ちゃんという感じ。 んで俺の言葉に、何故か不満そうに鼻を鳴らしやがる徹さん。 「ふん……まさか、飽き性のお前が今まで皆勤とはの?儂はてっきり、すぐに来なくなると思っていたのだが……」 「余計なお世話だ。アテが外れて残念だったな、徹さん」 「ハッ、無駄口を叩く暇があるなら、さっさと仕事をせんか!」 「へいへい、分かってますよ」 適当に応えつつ、手をヒラヒラ。 すっかり慣れた足取りで境内の最奥、目立たぬ場所に置かれた物置から、竹箒を手に入れる。 勤務内容は境内の掃除を始めとする雑務全般。結構な重労働でありながら、給料は0円。有り難すぎて涙が出る。 「……なぁ、徹さん。今更だけどさ、これってバイトじゃなくてボランティアじゃね?」 「あ?何だ小僧、不躾に」 「いや、だって給料無しだろ?ボランティアの意味知ってるか?無償労働奉仕だぜ」 「ハッ、儂より先に耄碌(もうろく)したか?給与こそなかれ、貴様には相応の見返りがあろう?無償ではない」 「まぁ……」 いや、理屈の上ではそうなんだけどな?やっぱ、給料無しは辛いだろ、普通に。さっき紗英に、『金大好き』とか言っちまったし。 んな事を考えながら、寒空の下二時間程労働。 そうして帰宅し、適当な時間に眠りに就く。至っていつも通りの一日だ。 ただ、一つだけ……俺にしては珍しく、夢を見た。 幼い日の記憶だ。折られた桜の木。怒られる俺と紗英。 『ボクのせいで君まで怒られた』と泣きわめく一人と、『わたしは気にしてないから』と微笑む一人を見て、可笑しそうに笑う大人達。 本当に、懐かしい……けれど、今の俺にとって決して小さくない約束を交わしたあの日の、夢景色。 『え、えっと……そうだ!わたしがいつか、桜をプレゼントしてあげる!だ、だから泣かないで、ね?』 忘れられない、忘れてはいけない……大切な、あの日の言葉――
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