第六章

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これは、グローリーにおいて、二つ名を変更する者に対して行う儀式のようなもの。 異議申し立てがあるのであれば、この場で言えば聞かれるが、この場以外では、二つ名に対する異議申し立ては受理されない。 「ありません」 「ならば、汝はこれより『漆黒の道化』を名乗れ」 「御意」 この日から、レイは『漆黒の道化』を名乗る事となる。 一連の儀式が終了してから、レイは師団長を見据え、口を開いた。 「何故…道化なのですか」 理由などわかりきっていた。 朔夜の二つ名から取った名だと言う事など、火を見るよりも明らかだ。 それでもレイは聞いた。 この男から聞いておきたかったのだ。 「道化は、『氷雪の道化』 我が娘…朔夜の二つ名… 君になら託せる… 朔夜の想いと共に戦ってくれ」 朔夜の父であるこの男に聞いておきたかったのだ。 「修吾<シュウゴ>さん…」 レイは、師団長の…朔夜の父、修吾の名を呼んだ。 「任せてください あいつの…朔夜の想いは俺が一緒に連れていきます」 「頼む」 二人の間に沈黙が流れた。 窓の外を見れば、いつの間にか日が陰り、空からは雪が降っていた。
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