第六章

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「師団長…か… なんの用だろうな…」 レイは、呟いてから鍛練所を後にする。 今は廊下を歩いている。 靴を踏み鳴らす音が軽やかな音を奏でている。 しかし、レイの表情は対称的に重い。 一人の時は、常に仏頂面で、誰かがいれば、にこやかに笑う。 偽りの仮面を着け、悲しみを讃えた瞳は前を…未来を映し出す事は無く、絶望している。 それでも、死に向かう事が無いのは、朔夜の分まで生きると言う確固たる決意の現れだった。 しばらく歩けば、いつの間にやら師団長のいる部屋の扉を目視出来る場所に来た。 レイは、偽りの仮面を着け、柔らかい表情で、扉の目の前に立つ。 <<コンコン>> 「師団長 冷徹の死神… 只今参りました」 淡々とした声を発した後、中から声が聞こえた。 「入れ」 短い言葉の端々に、威圧感が漂う声。 その声に促され、レイは扉を開けた。 「失礼します」 中に入れば、一人の男が、大きな窓から射す暖かい光を背にして、重厚な椅子に座ってレイに微笑んでいた。 「師団長 今日はどういった御用件ですか」 レイは一礼した後に言葉を発した。
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